薬屋のひとりごと 羅漢とは？猫猫の父で天才軍師の素顔を解説

『薬屋のひとりごと』に登場する羅漢（ラカン）は、軍部に名を轟かす天才軍師であり、そして主人公・猫猫（マオマオ）の実父という、物語における最重要人物の一人です。

その正体は、鋭い洞察力と戦略的思考を備えた知将でありながら、奇抜で理解不能な行動をたびたび繰り返す“変人軍師”としても知られています。

彼の視点は常人とは大きく異なり、「人の顔を象棋（しょうぎ）の駒として認識する」という特異な認知特性を持っており、この能力が戦場での判断力や謀略の冴えに直結していることから、他に類を見ない唯一無二のキャラクターと言えるでしょう。

また、猫猫の母・鳳仙（フォンシェン）との悲恋、そして娘である猫猫への強烈な執着と愛情が、彼の人間性にさらなる奥行きを与えています。

一見すると飄々としていて掴みどころのない人物ですが、実は政治的な駆け引きにおいて非常に計算高く、表には出さずとも皇帝や壬氏とも渡り合えるような影響力を持つ、物語の“影の推進力”とも言える存在です。

この記事では、そんな羅漢の人物像、猫猫との関係、過去の出来事、さらにはアニメでの登場シーンや声優・桐本拓哉さんの演技にも触れながら、羅漢というキャラクターの魅力と重要性を徹底的に深掘りしていきます。

羅漢の正体とは？─猫猫の実父であり天才軍師

『薬屋のひとりごと』に登場する漢 羅漢（かん・らかん）は、主人公・猫猫の実の父でありながら、軍部で「変人軍師」として一目置かれる天才的な戦略家です。

物語では、彼の異常とも言える才能、そして猫猫への歪んだ愛情が数々のエピソードで描かれており、単なる脇役ではなく、重要な伏線と感情の核を担う人物となっています。

2025年現在アニメ第2期でも注目度が急上昇しており、声優・桐本拓哉の迫真の演技によって、羅漢の持つ「狂気と理性の狭間」が強烈に浮き彫りにされています。

軍部に名を轟かす知略の将

羅漢は軍部の将軍職にあり、囲碁や象棋で培った戦略思考をもとに、現実の軍配置を組み立てる異能の軍師です。

人の動きや心理を「盤面の駒」として把握する独特の感性は、彼を他の軍人たちと一線を画す存在に押し上げました。

部下からは「太公望の生まれ変わり」と揶揄されるほどで、戦場では奇策を繰り出し、勝利を収め続けてきました。

猫猫の父でありながら、正体は長らく伏せられていた

羅漢は猫猫の実父であるものの、猫猫が後宮に上がるまでその関係は表沙汰にはなっていませんでした。

かつて花街で鳳仙との間に娘（猫猫）をもうけましたが、その後すぐに姿を消し、緑青館の“やり手婆”に立ち入りを禁じられ、引き取ることもできなかったのです。

しかし羅漢自身は、祭事への乱入や象棋の対局など、あらゆる手段で猫猫との接触を図ろうとし、彼女を特別視していることは明白です。

一方の猫猫は、彼のことを「変態軍師」や「おっさん」と呼び強く嫌悪しており、壬氏が羅漢の名を口にしただけで鬼のような形相を見せたという描写まであります。

人の顔を“将棋の駒”で認識する異質な才能

羅漢最大の特異点は、「人の顔が覚えられない」という認知障害を持っていることです。

この障害ゆえ、彼は人物を「碁石」や「象棋の駒」として視覚的に捉えるという方法で記憶しています。

この方法を教えたのは猫猫の養父・羅門であり、羅漢にとって羅門は「竜王」に見える特別な存在でもあります。

特筆すべきは、羅漢が唯一“顔”として認識できる相手が鳳仙と猫猫だという点。

彼にとってこの母娘は、「駒」ではなく「人間」として見えている唯一の存在であり、そのことが羅漢の愛情や執着にさらに深みを与えています。

羅漢と猫猫の複雑な親子関係

『薬屋のひとりごと』における羅漢と猫猫の親子関係は、ただの血縁では語れない深く複雑なものです。

表向きには軍人と後宮の女官という距離のある立場である一方、裏では過去の傷や感情のもつれが交錯し、どこか悲劇的な香りさえ漂わせています。

本章では、猫猫がなぜ父・羅漢を拒絶するのか、そして羅漢がなぜそこまで娘に執着するのかを、過去の恋と現在の選択を交えて読み解いていきます。

猫猫は「父」として認めていない？

猫猫は羅漢のことを「生理的に無理」「変態軍師」とまで呼び、強い拒否反応を示しています。

その理由の一端は、羅漢が猫猫の母・鳳仙を身籠らせた直後に姿を消したという過去にあります。

育ての親である“やり手婆”にすら「出禁」にされていた羅漢は、結果として娘にとって無責任な存在となり、猫猫の中には「家族」よりも「後宮で出会った厄介者」という印象の方が強く残ってしまいました。

また、猫猫自身が後宮や男という存在に警戒心を抱いている背景も、この断絶をさらに強固なものにしています。

羅漢の娘への溺愛と執着

一方で羅漢は、娘・猫猫に対して明らかに過剰な愛情を抱いています。

象棋の勝負を「娘との対話手段」とし、娘の動向には常に目を光らせ、時に軍部を動かしてでも彼女の身を守ろうとするその姿勢は、もはや常軌を逸しているとも言えるレベルです。

猫猫を後宮から引き取ろうとする計画が進む中で、彼は幾度となく「手元に置きたい」「育て直したい」といった言葉を口にしています。

この執着の裏には、鳳仙との別れに対する後悔と贖罪の念が見え隠れしており、ただの親心以上の感情が絡んでいることは明らかです。

過去の悲恋：母・鳳仙との関係

羅漢にとって、猫猫の母・鳳仙との関係は忘れられない“宿命の恋”でした。

囲碁の対局で敗北を喫したことで鳳仙の顔を“人の顔”として初めて認識できるようになり、そこから彼は明確に恋をしたのです。

しかし、身分差や自身の特異な障害、そして花街の掟に阻まれ、彼女を守ることも引き取ることも叶いませんでした。

猫猫が策略として象棋を用いて羅漢に鳳仙を“選ばせた”一件は、羅漢にとってようやく与えられた再会の機会であり、それは10年以上の時を超えた贖罪と再生の象徴でもありました。

その瞬間、彼はようやく過去の自分を、そして鳳仙との“答え”を見つけたのです。

羅漢の言動と人間関係の“ズレ”

羅漢という人物は、その圧倒的な知略と才能を持ちながらも、周囲とのコミュニケーションにおいては著しい“ズレ”を抱えています。

それは単なる変人というレベルを超えた「認知の偏り」によるものであり、物語の中で彼が放つ台詞や行動の数々は、しばしば他者の理解を超える奇妙さを伴います。

この章では、彼がなぜ「変人軍師」と呼ばれるのか、そして他者との距離感がなぜここまで極端なのか、その理由を深掘りしていきます。

部下や周囲から「変人軍師」と呼ばれる理由

羅漢は軍部では「将軍」として高い地位にありながら、その言動の奇抜さから「変人軍師」として広く知られています。

たとえば、宴席でも酒を飲まずに果実水ばかりを口にし、象棋盤を見ながら人の動きを予測して配置する──そんな言動は、部下からすれば天才というよりも“危うさをはらんだ人物”に映ることもあるでしょう。

それでも命令は的確、判断は迅速、戦績も抜群という実力があるため、誰もが彼を否定はできないのです。

そもそも人間関係に興味がない？独自の距離感

羅漢の人間関係に対する希薄な態度は、彼の認知の特徴に由来しています。

顔が覚えられない、性別の認識が曖昧──そうした特性は、必然的に人間関係そのものに強い執着を持たない性格を形成します。

彼にとって「人」は象棋の駒であり、感情よりも「動き方」と「配置」の方が重要なのです。

そのため、羅漢は必要以上に誰かと関係を深めようとせず、周囲から“距離を置く人物”として見られるのも無理はありません。

唯一覚えられる顔＝猫猫と鳳仙

そんな羅漢が唯一「顔」として認識できる存在が、鳳仙と猫猫です。

鳳仙の顔は、囲碁で負けたショックを受けたことで「駒ではない」として脳が認識した初めての人物。

そして猫猫もまた、その顔立ちや言動を通じて、羅漢にとっては“完全に人として見える数少ない存在”になっています。

この事実は、羅漢の中で「この親子だけは、駒ではなく人間」だという特別な意識があることを示しています。

その強烈な“個別認識”こそが、彼の執着や愛情の源泉でもあり、同時に他者との距離感をますます際立たせる要因となっているのです。

アニメでの描写と声優・桐本拓哉の表現力

『薬屋のひとりごと』アニメ第2期において、ついに羅漢が本格的に登場しました。

これまで原作や漫画で人気を集めていた彼の奇抜な言動、圧倒的知略、そして猫猫への執着が、映像としてどのように描かれるのか、多くの視聴者が注目していました。

そして、その期待に応える形で、羅漢の登場シーンは“アニメ的演出”と“声の芝居”によって見事に立体化され、大きな反響を呼んでいます。

アニメ第2期でついに本格登場

羅漢はアニメ第2期第13話（通算26話）より、初のセリフ付きで登場しました。

それまで匂わせる程度にしか語られていなかった猫猫の“父親”の存在が明確になり、彼の象棋盤と共に現れる姿に「ついに来た！」とSNSは騒然。

初登場の演出では、猫猫の視線からの“警戒感”と、羅漢の“異様な存在感”が際立っており、緊張感とユーモアの同居する独特な空気が見事に描かれていました。

原作ファンとのギャップは？評価と反響

原作ファンの間では、羅漢のアニメ化に対して「想像よりも声が落ち着いていて逆に怖い」、「もっとコミカルだと思ってたけど、意外と静かで余計に不気味」など、良い意味でのギャップを感じたという声が多く見られました。

また、表情の芝居や間の取り方も丁寧に作り込まれており、「目の動きだけで狂気を表現できている」と高く評価されています。

特に、鳳仙の話になると少しだけトーンが変わる繊細な演出は、彼の感情を表現する数少ない“人間的瞬間”として話題になりました。

桐本拓哉による“羅漢の狂気と知性”の演技

羅漢の声を務めるのは、実力派声優・桐本拓哉さん。

過去には『ジョジョの奇妙な冒険』の吉良吉影や、『キングダム』の呂不韋など、冷静かつ不気味なキャラクターを多く演じてきた彼にとって、羅漢はまさに“ハマり役”といえるでしょう。

桐本さんの演技では、常に淡々としているのに、どこか「底知れぬ恐ろしさ」がにじみ出ており、特に猫猫を前にしたときの“間”や“息遣い”が印象的です。

知性の仮面をかぶった狂気、その二重構造を見事に声で表現しており、視聴者からは「これが羅漢」「声だけで鳥肌が立った」と絶賛の声が多数寄せられています。

薬屋のひとりごと 羅漢というキャラの本質と今後の展開

漢 羅漢というキャラクターは、単なる「軍師」や「猫猫の父親」という立場を超えた、作品全体に“裏の軸”を与える存在です。

その特異な認知、鋭すぎる知略、そして不器用な愛情表現は、時に物語の緊張感を高め、また時に人間ドラマとしての深みを与えてくれます。

羅漢の本質とは「人を駒として捉える合理性」と、「愛する者にだけ人間性を向ける不器用さ」の二律背反にあります。

猫猫と鳳仙だけを「顔として認識できる」特別な存在として見ることができる彼は、その“異常さ”ゆえに感情と理性の間で常に葛藤しているのです。

それゆえに、視聴者・読者にとって羅漢はただの変人ではなく、どこか切なくもリアルな“父親像”として映ります。

今後の展開としては、羅漢が猫猫と和解できるか、あるいは「自分の愛が娘にとって負担になっている」と気づけるのかが、一つの鍵になるでしょう。

また、軍部における政略や、後宮との駆け引きにおいても、羅漢の行動が今後のストーリー展開に直接的に関わる場面が増えていくことは間違いありません。

単に「父親」というラベルでは語れない、“薬屋のひとりごと”の中でも最も複雑で魅力的な男──それが、羅漢なのです。