これは、「誰かがずっと心に秘めていた物語」が、ついに世界に放たれた瞬間だ。
『BULLET/BULLET』──その名が示すように、この作品は突き刺さる衝動と疾走感でできている。
朴性厚監督が構想から10年越しに温め続けてきた“妄想の塊”が、今ようやく形になったのだ。
舞台は文明が崩壊した近未来。盗み屋の少年たちが、世界を揺るがす秘密に手を伸ばす。その物語はただのバトルやカーチェイスでは終わらない。
“誰かのために走る”ということ。 それが、どれほど尊くて、どれほど痛みを伴うか──。
そんな静かな問いを、激しいアクションの裏で差し出してくる。だから観てほしい。叫びじゃなく、沈黙の中にこそ、この作品の本当の声があるから。
ディズニープラスで独占配信という形をとったのも、ただの戦略じゃない。
この物語を、遠く離れた誰かの心に“届ける”ための選択だったのだ。
『BULLET/BULLET』とは?タツノコプロの新たな挑戦
それは、ただのアニメじゃない。
アクションでも、群像劇でも、バディものでもあるけれど──この物語の本質はもっと“曖昧で、尖っていて、混沌としてる”。
『BULLET/BULLET』は、そんな感情の衝突と、エンジンの爆音が交錯する、新時代のエンターテインメントだ。
そしてこの予測不能なプロジェクトの背後にいるのが──あのタツノコプロ。
懐かしさと新しさを同時に纏いながら、“今、やるべき挑戦”を選び取ったその選択に、私はただ、痺れた。
タツノコプロ×完全オリジナルアニメの魅力
かつて『ガッチャマン』や『ヤッターマン』で世界を席巻したタツノコプロ。
そんな老舗が、いま再び“ゼロからの物語”に挑むなんて、誰が予想していただろう。
既存の原作も、メディアミックスの前提もない。あるのは、作り手たちの「こんなの、観たことないでしょ?」という気概だけ。
この潔さ、いまのアニメ業界ではむしろ異端だ。でもだからこそ、この作品にしか宿らない“熱”がある。
誰かの言葉じゃなくて、自分たちの衝動で物語をつくるということ。その覚悟が、1カットごとに滲んでいる。
カーアクションと群像劇の融合
“カーアクション”と聞いて、ただの爆走アニメを想像した人は、たぶん裏切られる。
この物語で走っているのは、タイヤだけじゃない。感情で、過去で、失った何かで、それぞれが全力で走っている。
盗み屋の少年ギア、仲間たち、敵となる者たち──みんな“誰か”に何かを託しながら進むその姿は、痛々しいほど真っ直ぐだ。
そして彼らが交わるたびに、一つの物語が終わり、また始まる。
この世界には、ヒーローも悪役もいない。ただ、懸命に生きる人間がいる。
カーチェイスは、その衝突の象徴。スピードと人間臭さがぶつかる音こそが、『BULLET/BULLET』の心臓の音なのだ。
10年越しの想い──朴性厚監督が語る制作の裏側
“こんな物語が観たい”と願いながら、10年間、ずっと抱え続けた企画がある。
それは、朴性厚監督の心の奥底で、静かに燃え続けていた火種。
『呪術廻戦』劇場版などで緻密な演出を見せた彼が、ついに放つ完全オリジナル。
『BULLET/BULLET』は、誰にも遠慮しない──そんな“本気の想い”が結晶になった物語だ。
インタビューで彼はこう語っている。「これは、僕の妄想と衝動のすべて」
「10年前に思いついたキャラや世界観を、何度も何度も壊しては組み直して、ようやくたどり着いた場所。それがこの作品です」
構想の始まりは10年前から
始まりは、朴監督がまだ若手だった頃。
ある日突然浮かんだビジュアル──「荒野を爆走する、感情を持った車」と「世界に抗う盗み屋の少年」。
それはあまりにも突飛で、非現実的で、でもどこか“切実”だった。
他作品の演出を重ねながらも、いつも心の片隅で育てていた。
それが今、ようやく「世に出していい」と思えた──。
だからこの作品には、積み重ねた10年の“温度”がある。
“好き”を詰め込んだ監督の覚悟
『BULLET/BULLET』を観ていると、「あ、これ監督が好きなやつだ」と思わされる瞬間が何度もある。
破天荒なキャラ、ぶっ飛んだ構図、思わず笑うセリフ回し──でもそれらは、単なる“オタク的快楽”に留まらない。
「届けたい」という真っ直ぐな衝動と、「誰かの痛みに気づいてほしい」という祈りが、そこにはある。
だから、観終わったあとに心がざわつく。
これは、“好き”だけじゃ作れない。“好き”に人生を賭けた人間じゃなきゃ、辿り着けない領域だ。
ディズニープラスで独占配信!その狙いとは
“10年越しの魂”が託されたこの物語を、どうやって世界に届けるか。
その答えとして選ばれたのが、ディズニープラス独占配信という方法だった。
かつての地上波や円盤とは違う、今という時代にフィットした“最速かつ最広の届け方”。
そこには、ただのマーケティングを超えた「想いのバトン」があった。
世界中の誰かに、自分たちの物語をまっすぐ届けたい──。
その願いを背負ったのが、ディズニープラスの“スター”だったのだ。
グローバル展開を意識した配信戦略
ディズニープラスの中でも、“より大人向け”の作品を扱うスター・ブランド。
そこで『BULLET/BULLET』が選ばれたという事実は、この作品の本気度を物語っている。
ただバズればいい、拡散されればいい、じゃない。
届くべき人に、ちゃんと届いてほしい──その慎重さと確かさが、“スター”という選択肢に結びついた。
これは、エンタメを“届ける”ことそのものに対する、誠実な姿勢でもある。
「スター」ブランドが担うポジション
ディズニープラスの中でも、“スター”には一種の矛盾がある。
世界的人気を狙いながらも、ニッチで実験的な作品が多い。
だからこそ、『BULLET/BULLET』のような“カオスな衝動”がちゃんと居場所を見つけられる。
派手で、賑やかで、でもその奥にある痛みに気づいてくれる人に出会える場所。
それが「スター」なんだと、私は思ってる。
キャスト・スタッフ陣の豪華さが際立つ
アニメの魂は、誰が声を吹き込み、誰がそれを描くかに宿る。
『BULLET/BULLET』が持つ、この“異常なまでの熱量”は、集まった人々の顔ぶれを見れば納得がいく。
朴性厚監督の10年越しの想いに応えたのは、一流の表現者たち。
彼らが本気で“遊び”、本気で“叫んだ”からこそ、この物語は私たちの心臓を撃ち抜いてくる。
声優陣:井上麻里奈、釘宮理恵、関智一など
まず、主人公ギアを演じるのは井上麻里奈。
少し生意気で、でもどこか憎めない。そんなギアの機微を、彼女の声が完璧に掬い上げてくる。
そして、人格分裂を持つAI・Qu‑0213の“中身”を演じるのが、釘宮理恵、花澤香菜、関智一、折笠愛という声優界のオールスター。
1キャラに4人の演者。これだけでも、この企画がどれだけ狂ってて本気なのかが伝わる。
声が変わるたび、同じ存在なのに“まったく違う感情”が乗る──この演技だけでも一見の価値がある。
スタッフ陣:金田一士、吉松孝博、三沢伸など
脚本は『ウマ娘 シンデレラグレイ』などで知られる金田一士。
シリアスもユーモアも切れ味鋭く捌ける彼が描く台詞には、“生きた熱”がある。
キャラクターデザインは吉松孝博(『HUNTER×HUNTER』)が担当し、どのキャラも“何かを背負った目”をしている。
さらに見逃せないのが、カーアクション監督・三沢伸(『頭文字D』)。
爆走する車たちの挙動、その重さ、軋むタイヤの音までリアルで、美しい。
走るだけで、こんなにドラマがあるなんて──そう思わせる映像がここにある。
OP/ED主題歌とPV情報
物語の温度は、音楽が決める。
『BULLET/BULLET』の世界を、感情で包み込んでくれるのが──このOPとEDだった。
イントロの数秒だけで、“この世界に連れて行かれる”感覚。
そしてPVがそれを裏付ける。
ビート、爆発、沈黙──すべてが完璧なタイミングで噛み合っている。
OP:Chanmina「Work Hard」
OPテーマを担当するのは、唯一無二のラッパー/シンガー、Chanmina(ちゃんみな)。
タイトルは『Work Hard』。
生きることは、走ること。走ることは、傷だらけになること。
そんなギアたちの生き様を、ちゃんみな流のリリックと鋭いビートが突き刺してくる。
“オープニング”というより、これはもう感情の起爆剤だ。
ED:Newspeak「Glass Door」
そして物語を“終わらせる”のが、Newspeakの『Glass Door』。
終わりなのに、どこか始まりのような──そんな余韻を残す一曲。
激しい物語を走り抜けたあと、ふと立ち止まりたくなるような静けさがある。
ガラス越しに誰かを見ているような、届かない距離の切なさ。
それでも、誰かと繋がろうとした物語の鼓動が、余韻として残る。
予告PVから感じる、“叫び”の温度
現在公開されている1st PVでは、ギアの声と叫び、車の唸り、銃撃音、そして沈黙──。
たった90秒で、“この世界に没入できる構成”が完成されている。
キャラの瞳の揺れ、爆発音のタイミング、セリフの余白。
その一つひとつが、「これはただの“宣伝”じゃない」と言っているようだった。
もしまだ観ていない人がいたら、今すぐにリンクを踏んでほしい。
この世界の温度を、まず“音”で浴びてほしいから。
公開スケジュールと視聴方法まとめ
この物語は、“爆走型の連ドラ”とも言える。
前編と後編に分けられた配信、そして劇場公開との連動──。
ただ観るだけじゃない、「どの瞬間に、どう出会うか」さえもこの作品の一部なのだ。
ここでは、今からでも“全速力で追いつける”ように、公開スケジュールをまとめておこう。
前編・後編の配信スケジュール
2025年7月16日 | ディズニープラス「スター」にて前編(第1〜8話)配信開始 |
2025年8月13日 | 後編(第9〜12話)配信スタート |
“8話+4話”という構成が、物語の転調と加速にフィットしている。
第8話の終わりで訪れる静寂──そこから一気にエンジンが再点火する後編の爆発力。
それは、まるで物語の中でキャラたちと一緒に呼吸しているような体験だ。
劇場版との違いと連動性
2025年7月25日 | 劇場版 前章(配信第1〜8話)上映開始 |
2025年8月15日 | 劇場版 後章(第9〜12話)公開 |
TVで、PCで、スマホで。そしてスクリーンで。
それぞれの“画面”が、この作品の違った一面を見せてくれる。
特に劇場版は、音響と映像が暴力的なまでに響く。
あの爆走、あの衝突、あの静寂。全部、“体で観る”という感覚になる。
どこで観ても正解。でも、劇場で一度は観てほしい。この物語の“熱”は、大画面でこそ暴れまわる。
この記事のまとめ
- 『BULLET/BULLET』は朴性厚監督による10年越しの完全オリジナルアニメ作品
- タツノコプロが原作なしで挑む“ゼロからの創造”という大胆な試み
- ディズニープラス「スター」で独占配信、劇場公開とも連動
- 圧巻のカーアクションと人間ドラマが融合した群像劇
- 豪華声優&スタッフ陣が作品の深みと中毒性を底上げしている
- OP・ED主題歌も作品世界を深く彩り、PVはそのエッセンスを凝縮
- 前後編に分けた配信+劇場版という“二重の物語体験”が可能
もし、あなたが何かにくすぶっていて。
「走る理由」も、「止まれない理由」も、うまく言葉にならないまま、毎日をやり過ごしているのだとしたら。
『BULLET/BULLET』は、その胸の奥を、優しく──けれど確かにノックしてくる物語です。
ギアたちは、誰かのために走ります。怒鳴ったり、笑ったり、転んだりしながら、それでも走り続けます。
それは、正しさのためじゃない。ただ“自分でありたい”と願う叫びだから。
私たちもきっと、そうだったはずなんです。あのとき、言えなかったあの一言も。何もかも諦めたような顔で飲み込んだ夜も。
『BULLET/BULLET』を観ていたら、ふとそんな記憶が静かに浮かんできました。
この作品は、派手で、うるさくて、めちゃくちゃで、だけど……その全部が、どこか人間くさい。
そしてたぶん、観終わったあとに残るのは、叫びじゃなくて、静かな“祈り”です。
走って、ぶつかって、壊れて、それでも前を見ていた、あの子たちの姿が、いつまでも心の中で息をしている。
そんな作品でした。
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